絵を描きながら考え、相手と共通の絵を媒体に対話・議論し、論理の混乱をほどけ!
令和の時代のビジネスシーンでは、高度に科学技術が発展し、専門化が進んでいきます。
いつ何が起きるか分からないくらい激しく変動し、「不安定さ」や「不確実性」が増していく。
その中で、もはや解決すべき問題は「所与」のものではなくなりつつあります。
この時代には、正しい答えなど存在しないのかもしれません。
何を解くか、何を行うかは、誰かが教えてくれるものではなく、
むしろ自分で「決めなければならないもの」になってきていると言えます。
- 令和の「正しい問題解決」とは?
このような時代の「正しい問題解決」とはなんでしょう?
それは、「正しく問題を解くこと」以上に「正しく問題を発見し、設定すること」のほうが重要だということです。
そして、「そもそも問題とは何か」ということを追求するために不可欠なのが、
「自分のやっていることを省察的に捉える能力」
すなわち、「振り返ることやリフレクティブな認知能力」を高めることです。
実は、多くの経営層の方は「何が問題かは分かっているので、その解決の方法を教えてほしい」とおっしゃいます。
このような方に限って、会社における問題の本質を見極められていない、ということもよくあります。
このような役員ご自身のものの見方・考え方にこそ、潜在的な真の問題があるのかもしれません!
- 正しく問題を見る
問題とは、実は主観的なものであリます。
世間で良く言われる問題とは、表層的な事象や状況のことで、「問題が生じている状況」にすぎません。
その問題状況における利害関係者は誰なのか?
誰にとっての問題なのか?その見方・考え方はその人の立場や所属組織などによって異なるものです。
一般的にはよく言われる5Pは、その見方・考え方の違いを引き起こす観点を表しています。
5Pとは?
- Position : 立場・視座
- Place : 所属
- Perspective : 視野・視点
- Purpose : 目的
- Period : 対象期間
のことです。
つまり、同じ企業の人が同じ状況や事象を見るにしても、この5Pの見解が違うことにより問題を複雑で根が深いものにしているのです。
組織における問題を浮き彫りにするには、まず個々人の主観的な問題認識を擦り合わせて見解を統一化する必要があります。
その上で、組織全体の問題へと定義し直さなければなりません。
しかし、このような作業には利害関係者との間で葛藤(コンフリクト)が生じやすく、私たちもこういった場面によく遭遇します。
このような時には、
・相手の意見を傾聴しながら5Pの見解を擦り合わせること
・相手の意見に対し冷静に「主観の客観化」する
という作業が必要になります。 - 具体的な方法
自分の頭の中で描く「問題のモデル(絵)」を紙の上に描き表してみましょう。
ただし、「考えるために絵を描く」のと「決めたことを絵にする」のとは大きく違います。
大事なのは、「お互いがワカルための道具として絵を描く」ことです。
すなわち、論理的説得の道具として描きながら考え、自分を説得(=納得)しながら相手も説得する、このために絵を描くことが重要になるのです。
さらに、絵を描きながら必ず共通の絵(=媒体)をベースに対話・議論し、論理の混乱をほどいていく作業がたいへん効果的です。
ところで、直接対面で議論していると、双方とも熱くなり修羅場になることもしばしばです。
ただ、そういった状況になっても全然問題ありません。
なぜなら、修羅場のない議論は、一方的で強制的な主張やどちらかが妥協していることによるものだからです。
コラボレーション(協働)的な会話や議論は修羅場のように見えるかもしれませんが、そこにこそ価値があるのです。
- まとめ
利害関係者間で異なる問題状況に対する見解の違いがある場合、それを共通の問題として定義化するためには絵を描くことが大事です。
ホワイトボードやカレンダーに絵を描き、その絵に向かって議論や対話をすることをお勧めします。
新たな知やアイデアは、人と人の主観的で相互作用的な関わりの中から、このような手法によって生まれてくるものなのです。
東京のとある会社では、社内の全会議室の壁一面に白色の板を張り付けています。
いつでも誰とでも議論できるようにし、その絵をあえてありのまま残すことで、他の誰でも自由に議論に参画できるようにしています。
これは「The Learning Company」を形創る一つの要素、生きた学びの場を演出した「学習環境」(Learning Climate)であるといえるでしょう。
ワカルための道具として、絵を描くことを習慣化してみては如何でしょうか!