前回のコラム12に続く2番目の経営テーマ:「新規の事業ドメインの探索で将来の事業の柱へ!」について、アスク総研の取り組み方を2回に分けて簡単に説明いたします。
新規事業開発のスタート地点
新規事業開発への取り組みは、先ずその根拠と目的をメンバー間で共有することから出発します。
- そもそも新規事業の必要性とは?
- なぜ今なのか?
- 企業内でどんな地位(新事業の位置づけ)を目指すのか?
- 目標としたい売上と利益は?
現実的には、自社の経営資源能力を無視して一足飛びに新分野へ進出することは、大きなリスクを伴います。
そこで、
- 自社の経営資源とその能力の棚卸:特に固有技術(自社の保有する技術の強さ)
- 市場や顧客のニーズ(市場の魅力、事業機会)
を探索し、どのようなビジネスモデル(Who- What- How)で勝負するのかを発想・抽出していくことになります。
- WHO 誰に(市場、顧客)
- WHAT 何を(提供価値、市場/顧客に役立つ「機能」・「利点」)
- HOW どのように(技術、商品・サービス)
新規事業の開発計画に関する書籍は多く出版されています。
今回は、個々のプロジェクトで異なる手法については省略し、
新規事業の育て方について、アスク流の総論的な意見を述べたいと思います。
新規事業の育て方
新規事業の育て方は、その企業の資金力と既存事業の存続性(既存の製品/市場のライフサイクル)によって、
3通りの方法があります。
- 資金力が厳しく、かつ既存市場/製品の衰退化のスピードが速い場合
→とにかく早急に新規事業を立ち上げ、収益源の柱としたい - 資金力に余裕があっても既存の事業ライフサイクルが衰退期の場合
→早く新規事業を立上げて今後の事業ポートフォリオを見直したい - 資金力に余裕があり、将来の理想的な事業ポートフォリオを考えたい場合
→長期的に業界をリードできる商品・サービスで次世代事業の基軸を構築したい
資金力が厳しく、早期に新規事業を立ち上げたい場合
このケース①の出発点は、以下の点を検討すべきでしょう。
- シナジー効果を狙って、現有経営資源(優位性のある固有技術など)を棚卸し、能力評価すること。
- その固有技術は何に使えるのか、どのようなはたらきをするのかをオープンに発想すること。
- このために、技術特性(シーズ)のもつはたらきを「機能」(〇〇を〇〇にする)という抽象的な見方で分解すること。
次のステップは、以下のような作業です。
- 自社の製品や技術特性(シーズ)から創造できる用途市場/顧客(仮説)を抽出
- そこにはどのような要求機能(ニーズ)があるかを検討
ここまでまとまれば、シーズ(技術の持つ機能)とニーズ(要求機能)の適合性評価を行うことが可能です。
従って、
- 自社の技術機能が、
- どの用途市場/顧客において、
- どのような価値として利用できるか、
というアイデアを創発することが可能です。
可能であれば、新規/周辺ドメイン(Who-What-How)の仮説は、100件以上抽出できるとよいでしょう。
仮説を絞り込む
さらに下記の3つの視点から事業化評価をおこない、30-50件程度の有望であると思われる仮説に絞り込みます。
- 他社が追従できないか?:
自社の技術特性がユニーク(独自性がある)で、その強みを活かすことができるか? - 他社の参入障壁・リスクが大きいか?:
他社が参入を諦める中、自社の独自性や新規性を活かして実現できる可能性が高いか? - 他社にとって参入メリットが薄いか?:
他社の投資効果が薄い中、自社にとっては事業が大きくなりそうな可能性があり、儲かりそうか?
ここで選定した仮説に関しては、一つ一つ新事業コンセプト(=事業化のための基本定義)として文書化していきます。
さらに、文書化された新事業コンセプトは、市場でのポテンシャル調査と検証のステップへ進みます。
これは、対象とする市場ユーザーをサンプリングし、ヒアリングを通して、新事業コンセプトの定義の裏付けを取る作業です。
もちろん採算性とリスク評価も合わせて行います。
以下のような内容を定義化したものです。
- だれの(市場/顧客)
- どのようなニーズに対して、
- 「〇〇」を競争優位にして(どんな競争力で)
- だれと或いは何(代替品)と競争して、
- 「〇〇」という企業方針(事業展開の規模など)のもと、
- 「〇〇」(自社技術)のもつ、「〇〇」という機能(価値)を、
- 「〇〇」の供給方法で提供する事業を行う。
- また、この事業活動における制約とリスクは「〇〇」である
この結果を踏まえて、早急に具体的な新製品・新規事業開発計画書およびアクションプランの作成・社内合意・実行に入ります。
ところが、市場性調査からアクションプランの実行までの作業プロセスに時間を掛けすぎると、事業機会を逸してしまうことになりかねません。
環境変化や競合参入などで手遅れになってしまうからです。
市場情報、顧客情報は、「鮮度」の高いうちにどの様に料理するかが勝負です。
この意味において、BtoBビジネスでは、
- 「新事業コンセプト」を作成する前の(新規/周辺ドメインの有望とみられる仮説設定した)タイミングから、新規/周辺ドメインでの顧客候補に対し、一つ一つ提案活動を行っていくこと。
- 自社の技術の持つ機能がどのような顧客価値(仮説)を生み出すか、根気強く提案商談を繰り返していくこと、
が新製品コンセプトの創造に繋がることになります。
このように、早期に新規事業を立ち上げたい場合は、既存の固有技術(自社の強み)を活かしたシーズアウトアプローチが適していると思います。
一方、対照的に、地元の企業や既存の顧客と強いリレーションがある場合には、マーケットインによるアプローチも考えられます。
ここから、続きは次回に。。。