17. 企業ブランディングの総まとめ

アスクメソッド

前回は、ブランディング活動を推進する上での問題点と、ブランド価値を高めるための課題を整理しました。

次は、これらの問題点や課題をどのように解決すればいいのか?という点を考えていきましょう。

ブランディングの問題点・課題解決方法

企業ブランディング活動では、経営者から現場担当者に至るまで、全社員で一貫した「ブランドコンセプトとは何か」の認識論(What)から運動論(to Whom&How)への展開が成否のカギを握ります。

この際、言葉の意味や定義を曖昧に議論を進めるのは決してよくありません。
参加者全員が言葉のもつ意味の擦り合わせを行う共通の場(学習環境)をもつことがブランディングパワーに繋がります。

コラム3でも取り上げましたが、このような企業ブランディング活動は、Plan-Do-Seeの管理統制型アプローチではなく、内省化(reflection))による「経験からの学び」のサイクルが欠かせません。

問題点や課題の解決に向けた施策を行う中で、以下のような点を主観的に振り替えることが大切です。

  • 顧客へのブランド意識の浸透や共感が見られるようになってきているのか?
  • それは何によって感じられるか?
  • ブランディング活動の何が影響しているのか?

また一方で、市場や顧客のブランドイメージ検証のために、主観のフィルターを外した客観的なインタビュー調査(リサーチ)もこのサイクルに組み込むことが必要です。これで、主観と客観の両要素の関わりからキチンとしたものの見方ができるはずです。

このようにリサーチを組み込んだユニークな経験学習アプローチを弊社では、「アクションリサーチ・ラーニングサイクル」と呼んでいます。

アクションリサーチ・ラーニング

  • 状況の見える化(アクションリサーチによる主観と客観のW効果検証と分析)
  • リフレクション(対話による振り返り)
  • 新たな仮説づくり(教訓の引き出し)
  • ポジティブフィードバック(新たな機会への適用)

ただ、このような運動論において気を付けることは、過去のコラムで取り上げた新規事業の探索のようにはいかないということです。

新規事業の立ち上げと企業ブランディングの違い

新規事業は、新たなアイデアを創発して成功や失敗からの学びを繰り返しながら、新たな事業の芽を育てていく上記のアプローチで良かった訳です。しかも、最終的にはビジネス成功の必要条件として「結果の質」に繋げなければなりません。

一方、企業ブランディングは、結果の質を創り出す源泉、つまり結果を生み出す十分条件であることです。

会社内で選抜された関係者が主導する新規事業探索チームのように、ただ経験学習サイクルを回していけばよいというわけではありません。
会社組織の全員を巻き込みながら、活力もったブランディング活動を全社へ展開しなければなりません。

では、どのような取り組みが効果的なのでしょうか?

成功循環モデル

私は、「成功循環モデル」の推進をお勧めしております。

「アクションリサーチ・ラーニングサイクル」を効果的に回すための潤滑油としての役割も効果的です。

会社内には、全ての物事に批判的であったり攻撃的になったり、全く異なった思考や意見を持つなど様々な方がいらっしゃいます。このような方を含め全社員がベクトルを合わせて共通の企業ブランドを創発していくために、是非取り組んでみていただきたい有名なモデルです。

元MIT教授のダニエルキム氏によるこの「成功循環モデル」は、組織としての結果の質を高めるためには、まず他人との「関係性の質」を高めるべきであるということを提唱しています。

関係性の質が高まった組織では、一人一人のメンバーがより自発的にアイデアを出したり、ポジティブな意見を述べるようになります。このような他人との関係(つながり)を通して各メンバーは成長し、「思考の質」も高まります。

時には、他人からの批判にオープンになり持論を問い直しながら、仕事への思いややりがいをも醸成していきます。これが「行動の質」につながり、結果の質の高さへと繋がっていくはずです。

出展:https://mag.executive.itmedia.co.jp/executive/articles/1112/05/news007.html

従業員と従業員の「関係性の質」の向上から思いのつながりを広げ、顧客との信頼関係を通して、将来のブランド創発に向けた終わりのない探求と学びを繰り返すこと。

他人との「関係性の質」→思考の質→行動の質→組織としての結果の質

これにより、企業内で独自の世界観を構築し、顧客を引き付けるオリジナリティで、顧客のマインドに深く働きかける。

このような取り組みを継続してやり抜いた企業だけが、評判が高いブランドを手に入れることができるのです。